23音の花弁 -木琴茶室

 日本では古来から様々な形で音を楽しむ文化が芽生えていました。 
 
 雨音がメロディーをかなでる水琴窟やししおどしの音、風の流れを楽しむ風鈴の音。 虫や動物の鳴き声を様々な形で文語として表現しているのも環境音に対する興味の表れです。 
 
 こうした単純で原始的な音が持つ魅力を現代のコンピューター設計の技術を用いて、充分に引き出す提案。 

 この茶室は木琴でもあり、土台に配置された23鍵の音板を風や雨水によって振動するはなびらが打撃することで、偶発的なメロディーが奏でられます。 

 赤ちゃんの泣き声はA4(440Hz)に近いと言われています。A4は人間の耳に最も聞き取りやすい音とされオーケストラのチューニングや電話の呼び出し音にも使われます。

 この最も根源的な音を基音に定め、上下に完全5度ずつ音域を拡張して得られるG4,D4,E4と8Va低いA3 の5音をある種の音階と定めました。この5音は3音ずつで計15回現れ、それ以外の8音 には立体的にねじれた不思議な音響が現れるように5音との関係を考えて適当なものが選ばれました。

 この音の連なりは時に牧歌的なメロディーとして、また時に敬虔なコラールのようにもきかれるかもしれません。そこにしかない風やせせらぎの音、そして木琴の音。これらを体全体で感じながら、茶会は取り行われます。