「個の空間」は断熱・防音・空調をしっかり備えたコクーン。屋上に隠した室外機や、視線は遮り風を通すブロックが、静けさと通風を両立します。キッチンもあえて個室化し、ガラスの外皮に囲まれたオープンスペースに不要なヒエラルキーを生まない構成に。冬は集熱パネルの熱を活かした床暖房が家全体をやわらかく温め、夏は水盤の気化熱と上昇気流、屋上緑化が涼やかな流れをつくります。家具の置き方次第で、スタディ、くつろぎ、ダイニングが滑らかに切り替わる自由度も魅力です。

 外と内が「見え隠れ」する距離感が、日常の所作に奥行きを与えます。季節の風や光を受け止めながら、家族のリズムに寄り添って形を変える——この家は、暮らしそのものがやさしく循環する装置です。