W|延べ床:6㎡|地上1階|茶室|
波の間
Digital Tea House
茶道は審美的な特徴を持つ日本文化において 重要な位置を占めるものです。
そしてその舞 台の場となる茶室はお茶会の雰囲気を演出す る包みともいうべき建築です。
それは周囲の 環境に対して呼応しつつも、周囲とは断絶し た別世界の平穏を備えるという二つの相反す る要素を持つ空間と言えます。




発想の原点
私達の発想の原点はお茶碗です。その表面に浮き出ている波の曲線やお茶碗自体の形は、その美しさやそれが表す自然の不完全さにより、豊かな表現が成されていると言えます。私達はこの波を合板を曲げるこ
とで表現しようと考えました。
通常、茶室の外部への出入りはにじり口に代表されるように非常に制限された状態にあります。それを私達は壁の厚みや、波のゆがみ具合、密度で操作しました。そうすることで、出入りだけでなく光や内外の視線にも呼応することができ、茶道の精神の表現をより合理的な建築意匠の機能まで昇華させることができるからです。
また平面は千利休が設計した待庵に敬意を払い、二畳の伝統的な平面を採用しました。




素材と加工方式
ワークショップで要求された素材は9ミリから12ミリ厚の合板でした。各部材の加工を行ったのは、コンピューティングデザインによって作成されたデータを基に精密に成形するCNC ルーターという最新鋭の木材加工機
械です。
私達は9ミリ厚の合板をいかにしてより自然で流れるような形にできるかと言うことを実験し、最終的に幾何学的に計算された溝の線を彫ることで曲げることに成功しました。



波の間
茶室内部は広大な海原を想起させる「波の間」と言える空間となりました。光が適度に入りつつもお手前の雰囲気に最適な明るさが生み出され、囲われていながらも外の風や物音が静かに入り込む、小さいけれども多様な魅力を持つ不可思議な空間が生み出されました。私達はコンピューティングデザインによって単に茶碗の形を真似るということだけでなく、本来茶碗が表現する日本の自然に対する美への賛美、哲学までもを空間で表現しようとしました。

